学光Vol.8 秋号(一般公開用)
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822LIGHT OF LEARNING vol.「意志(勇気)」は、現実に直面する困難や人生の試練から、目を背けるのではなく向き合うこと、現実の厳しさと対峙しつつも、ひるむことなく、立ち向かおうとする資質をいう。そして、今ひとつの「未来志向 (希望)」 とは、将来を見据える力のことである。近くを見過ぎると目が疲れるのと同じように、人間は、目の前の現実の厳しさだけに目を奪われていると、落ち込みや絶望感を体験する。こうした悲観主義に立ち向かうためには、頭をあげて遠くを見つめること、少し先に目線をやる未来志向が不可欠である。そして、こうした3つの要素で構成される楽観主義の中核にあるものが、人間的強さ(human strength)である。このようにみてくると、池田が強調する現実生活に根ざした人間教育論は、楽観主義に裏打ちされたものであり、その目指すものは、現実の厳しさに立ち向かう強い精神力を携えた主体的、 自立的人間の創出にある。池田の人間教育論は、人間を幸福へと向かわせるための方向づけが、 具体的かつ明確に示されている点に特徴がある。そのことは、「教育が知識の伝達と知識にあそぶ研究に陥ってはならない。なによりもまず、人間であることの意味を教え、真の人間としての生き方を学ぶ所でなければならない」(池田2005,p.8)との池田の言葉に集約されている。今、グローバルな視点から、あらためて教育について考えるとき、「持続可能な開発のための教育 (ESD: Education for Sustainable Development)」に世界の関心が集まっている。周知のとおり、現代社会は、環境問題や人権問題、貧困問題や食糧問題、エネルギー問題や民族紛争、平和問題など、地球的規模の問題が山積している。人類がこうした地球的規模の問題に適切に対処し、将来にわたって、持続可能な社会を構築していくためには、‘think globallyʼ、すなわち、グローバルな視点に立った思考力や発想力、判断力が何にも増して必要とされている。その一方で、‘act locallyʼ、すなわち、地に足をすえて、眼前の身近な問題と地道に向き合い、対処しようとするバイタリティと行動力が求められている。それは、岸見(1999)が指摘しているように、「今日ここでこうして接しているこの人との関係を、少しでも変えようと努めることが、ひいては全人類を変えることにつながる」(「アドラー心理学入門」p.179)という営みにほかならない。こうした地球的規模での問題群の解決につながる新しい価値観と行動力を兼ね備えた創造的人間の育成が、これからの学校教育には求められている。文部科学省によれば、持続可能な社会づくりの担い手を育む教育の実現を可能にしていくためには、①人格の発達や自律心、責任感などの人間性の育成 ②他者や社会、自然との関係性を認(4)教育の持続可能性の探求と創価の人間教育

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