学光Vol.9 冬号(一般公開用)
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1はじめに今日の国際的な経済活動は、国家の間の経済関係として見ることができます。具体的には国民経済と国民経済の間の財・サービス・資本に関する国際取引関係に注目することになります。このような見方を「国際経済」の次元と呼びましょう。他方、世界経済は国も地方も企業も個人もNGOsも、これらすべての経済主体が相互依存と相互競争によって連結された一つの包括的なシステム、網状組織として理解することができます。そこでは、あらゆる経済主体は世界経済の構成要素であり、結び目となります。これを「グローバル経済」の次元と考えましょう。自立学習入門セレクション9世界経済の理解には、この「国際経済」と「グローバル経済」という二つの見方が要請されます。た。戦後の「国際経済」に制度的枠組みを提供し、物理的な衝突を回避するために、少なくとも1970年代までは国際経済活動に規範的なルールと秩序を付与してきたのが「ブレトンウッズ体制」でした。しかし、1960年代後半から70年代における米国による過剰な消費と輸入、そして産業力の低下、ドル通貨の過剰散布の結果として、金・ドル本位制度は崩壊し、変動相場制へと移行します。また二度の石油危機による先進各国経済の低迷と財政赤字の拡大により国家主導による経済運営は行き詰まり、その反動として80年代以降に顕著となるのが「小さな政府」を志向する古典的なレッセ・フェール(自由放任)経済への回帰でした。自由な市場経済活動が効率性と成長と予定調和を導くという信念(信仰)からなる「ネオリベラリズム」が90年代、2000年代において、支配的な世界経済の指導原理となります。「国際経済」というよりは「グローバル経済」として世界を構想することが要請される時代を迎えます。2「国際経済」から「グローバル経済」へ20世紀における経済活動を「国際経済」として理解することには合理性がありまし

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