学光Vol.9 冬号(一般公開用)
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第49回学光祭 記念講演5日中国交正常化後、日本の大学で初めて正式な中国の留学生を創価大学で受け入れた(1975年4月) ⒸSEIKYO SHIMBUN周恩来・池田大作会見50周年記念シンポジウムを創価大学で開催(2024年12月 「周桜」前)ことが分かります。第5点目に、会談で周総理は「二十世紀の最後の二十五年間は世界にとっても大事な時期です。お互いに平等な立場で助け合い、努力しましょう」と述べました。これは68年提言で創立者が、前述の世界民族主義に基づいて、国際社会の異端児のような中国を、他国と同じように平等に公正に交際していかなければならない。今日アジアをおおう戦争の残虐と貧困の暗雲を吹き払う為に、日本、中国を軸として、アジアのあらゆる民衆が互いに助け合い、守り合っていかねばならない、との主張が背景にあると思います。周総理の上記の発言は、中国が他国と平等に交流できる環境がなければアジアの平和は実現しないとの創立者の68年提言に対し、共鳴を表明したものだと思います。以上を整理してみると、周総理の68年提言への共鳴や賛同は、以下の5点にあるように思えます。①中国問題は世界平和を実現する鍵である、②日中両国の青年友好関係の樹立、③世界民族主義、④日本政府の国交正常化の為に取るべき政策、⑤中国は決して侵略的な国ではない。このように、50年前の会談は、周総理が創立者の68年提言に全面的に賛同したことを示しており、その後の創立者の行動にも多大な影響を与えました。その中でも特に注目に値するのは、創立者が周総理の人格的美徳に直接触れて、それを日中の青年に伝え友情の構築を促進していったことです。私は創立者が、周総理の人格的美徳を次の3点にわたって宣揚していったと思っています。1点目は「人民奉仕の哲学」の実践者で、2点目は中国の儒教における「五常(仁義礼智信)」の体現者で、さらに3点目は「共生のエートス(道徳的気風)」が象かたどる人格です。創立者はかつて世界市民の3要件を次のように提示しました。第1要件は人種や民族や文化の差異を恐れず、尊重し理解し学び、成長の糧としゆく「勇気の人」、第2要件は生命の相関性、平等性を深く認識しゆく「智慧の人」、第3要件は身近に限らず、遠いところで苦しんでいる人々にも同苦し、連帯しゆく「慈悲の人」と。周総理の人格的美徳には、創立者が提唱する世界市民の3要件が満たされていると思います。即ち、「人民奉仕の哲学」の実践者には第3要件である「慈悲」の行動が、「五常」の体現者には第1要件の差異を尊重できる「勇気」と第3要件の「慈悲」の行動が、「共生のエートス」が象かたどる人格には第2要件の「智慧」がそれぞれ満たされていると思います。創立者にとって周総理は、世界市民の要件を満たし、その生き方を貫いた、「世界市民」教育における理想的な人間像の典型であると言うことが出来ると思います。創立者は日中の青年に目指すべき世界市民としての理想像を示されたのだと思います。この周総理と創立者の会談は、日中友好の未来を見据え、共に世界平和を実現する決意を確認した重要な出来事でした。創立者はその後も日中友好に尽力し、青年たちにその志を伝え続けました。私たちも、この会談から学び、異文化との対話を重ね、世界市民としての役割を果たしていかねばならないと痛感しています。

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