年vol.12新光友ポスト活から出発し、研究(真理の認識・価値の創造)を経て、生活に還元していく。このサイクルによって幸福な生活を獲得していく。そのために生涯に亘って学習生活と実際生活を並行していくことが、半日学校制度の意義です。創価大学が新しい大学として出発した後、創価大学としての共通性を保ちながら通信教育の意義を備えて「第二の開学」を果たした通信教育部も、2026年5月16日に50周年の節目を迎えます。本連載が、次の半世紀に向けて「創立者」のバトンを受けついだランナーたちへのエールになれば幸いです。た塩原氏は、それから7年間学生係として通信教育部に尽くし、その後2000年に開設された創価教育研究センターでは初代事務長に就任しました。広汎な資料収集を基に、牧口・戸田・池田の基礎的研究の土台を作ろうとした塩原氏の研究成果の一つが同論文になります。この論文では、池田の開学式のメッセージを分析し、創価教育における通信教育の特色として、①すべての人々に開かれた大学、②働きながら学ぶ学習形態、③通信教育と人間教育、の3点を挙げて考察しています。ここでは、この3点を踏まえつつ、池田が通信教育部を「第二の開学」と位置づけたことに着目して考察します。創価大学は1971年に開学しますが、その同時代的な背景として、大学紛争があります。大学紛争は、大学当局と学生の対立を主要因とする紛争ですが、1960年代には過激化の一途を辿ります。池田は、この大学紛争における学生運動を単なる世代間闘争や政治闘争ではなく、既存の大学の在り方や社会の矛盾と不合理への反発として捉えていました。創価大学は、大学紛争の暴風が吹き荒れる最中に、新しい大学として出発します。池田は、この新しい大学の特色として、教授陣は青年のような研究意欲を持ち教育に生命をかけて取り組む人を中核にして構成すること、教授と学生の関係はともに学問の道を歩む同志的なもので民主的な関係であること、学内運営は学生参加の原則を実現することなどを述べています。創価大学が新しい大学として開学した5年後に、通信教育部は「第二の開学」として誕生します。池田が通信教育部の「開学」後に語った「これで創大も人材育成に本腰が入る」(『学光』第1巻第9号、1976年12月、32頁)、第1回秋期スクーリングでの「この人達の中からダイヤモンドのような人達が出てくる可能性が高いのです」(同31頁)という発言からも通信教育部への期待の高さが窺えます。これまで各回に亘って述べてきた「創価教育と通信教育の歴史」を俯瞰しながら通信教育の意義を3点挙げておきたいと思います。まずは、①学校教育の崩壊に対するセーフティーネット、という点です。学校教育は、時代の要請等により干渉や制限がかかることも少なくありません。また、特定の場所・時間を条件とするため、経済的負担と強制力を必要とします。自学自習を基本とする通信教育は、経済的負担と強制力も控えめで、教材さえあれば学習のタイミングや方法も比較的自由に選べます。さらに、人的・外的な事情によって学校教育が崩壊するようなことがあったとしても、通信手段と教材さえあれば、学習の最終的な受け皿として機能することが可能です。次に、②誰にでも開かれた教育のシステム、という点です。かつては学校教育、特に大学は、一部のエリート層や富裕層のものであって、誰にでも開かれていた訳ではありませんでした。近代学校教育が始まって以来、それを年齢・性別・所属等を問わず誰にでも開かれた教育にしていこうと工夫されていったのが通信教育というシステムです。特定の場所・時間を必要とする教育は、何かしらの変数をもって選抜せざるを得ないのです。最後に、③生活との強いつながり、という点です。牧口の考えた創価教育学では半日学校制度が提唱されます。この制度の現実態の一つの在り方として、通信教育は想定されています。生20<参考文献>『学光』創価大学通信教育部、1976年4月~1980年6月刊行の各号および1985年5月号・1995年5月号辻武寿編『牧口常三郎箴言集』第三文明社、1979年『牧口常三郎全集』第4巻、第三文明社、1982年悠木夏文『シリーズ「大学は挑戦する」創価大学』栄光教育文化研究所、1996年『池田大作全集』第61巻、聖教新聞社、2002年岡安博司「創価大学の開学を語る―創立者の大学構想を中心に―」(『創価教育研究』第5号、創価教育研究センター、2005年)池田大作『若き日の日記』〔1〕、聖教ワイド文庫、2005年池田大作『青春対話 普及版』2、聖教新聞社、2006年池田大作『新・人間革命』第15巻、聖教ワイド文庫、2007年塩原將行「創立者の大学構想についての一考察(1) 通信教育部開設構想とその沿革」(『創価教育研究』第5号、創価教育研究センター、2006年)『池田大作全集』第101巻、聖教新聞社、2011年池田大作『新・人間革命』第23巻、聖教ワイド文庫、2015年「創価教育の源流」編纂委員会編『評伝 牧口常三郎』第三文明社、2017「創価教育の源流」編纂委員会編『評伝 戸田城聖』上・下、第三文明社、2019年・2021年創価大学50年の歴史編集委員会編『創価大学50年の歴史』創価大学、2021年塩原將行「池田大作が“戸田大学”で学んだこと」(『創価教育』第15号、2022年、池田大作記念創価教育研究所)岩木勇作「池田大作の「師弟」観――普遍的な教育論としての「師弟」――」(『東洋学術研究』第64巻第1号、東洋哲学研究所、2025年)石神豊氏へのインタビュー(2025年9月9日)稲光禮子氏、坂本安氏、藤原秀二氏、田中真弓氏、依田文雄氏へのインタビュー(2025年9月20日)創大名所マップ https://www.soka.ac.jp/edu/document/spot/(2025年11月25日閲覧)※掲載した写真はすべて筆者撮影(2025年11月25日)。連載終了にあたり、これまでご協力いただいた関係者各位の皆様にこの場を借りて感謝申し上げます。
元のページ ../index.html#21